Web広告を運用しているのに、コンバージョン(CV)が増えない、顧客獲得単価(CPA)が下がらないと悩む企業は少なくありません。
そのような場合、回しているつもりのPDCAサイクルが形骸化しており、改善の根拠があいまいなまま施策が継続してしまっていることが原因かもしれません。
Web広告は、広告の仕組みの変更や競合の動きが早く、ユーザーの行動傾向も日々変わります。
そのため、仮説検証の流れを明確に定めておき、継続的に改善できる体制をつくることが成果の向上に直結します。
この記事では、PDCAの基本から具体的な進め方、よくある失敗例、媒体別の最適化ポイントまで一連のプロセスを見ていきましょう。
目次
Web広告運用とPDCAの基本
Web広告運用では、PDCAを適切に回せているかどうかが成果を大きく左右します。
まずは、成果が伸びない原因となりやすいポイントを整理します。
PDCAを十分機能させるために
Web広告運用では「PDCAを回しているのに成果が出ない」というケースがよく見られます。その原因として多いのが、改善の出発点となる基準がPlanの段階で整理されていないことです。
Planで本来行うべきは、
- どの指標を成否判断に用いるのか
- 何を達成するために広告を配信するのか
- どんな仮説をもとに施策を組み立てるのか
といった改善判断の基準を言語化する作業です。
この基準が曖昧なまま運用を始めると、Doで実施する施策の方向性が揃わず、Checkでの評価も担当者によって解釈が異なり、Actionでの改善につながらなくなるといったことが起こり得ます。
4つのプロセスは連動してこそ成果につながる
PDCAは Plan → Do → Check → Action の流れが連動していることが前提です。
Planで設定したKPI(重要業績評価指標)が明確でないと、Checkで何を基準に評価すべきかがわからず、改善が場当たり的になってしまいます。
さらにWeb広告は業界の傾向として変化のスピードが早いため、Planで期間を明確に定めずAction(改善)の実行が遅れるだけで成果が大きく揺らぐこともあります。
媒体のアップデートや競合状況の変化に対応できず、結果として成果につながらないような広告を配信したり、CPAが悪化したりすることも考えられるでしょう。
各フェーズをつなげて考え、PDCAの流れを一定のリズムで回すことが安定した成果に直結します。
PDCAは運用の型として仕組み化することが重要
成果が伸び悩む企業では改善が属人化し、担当者ごとのやり方でPDCAを回してしまう傾向があります。
改善プロセスの型がないと施策の一貫性が失われ、継続的な最適化が難しくなります。
そのため、評価基準・検証フロー・改善の判断軸をチームで標準化することが重要です。
これにより、PDCAが止まりにくくなり、改善サイクルを継続できます。
丁寧なPlanを起点にプロセスを整え、中長期的に成果が積み上がる運用体制をつくることを意識しましょう。
改善の型づくりを進めるうえでは戦略設計に加えて、必要に応じて外部の専門家や代理店を活用することも有効です。
詳しくは以下の記事を参考にしてください!

Plan(計画)|成果を左右する最重要フェーズ
ここからはPDCAそれぞれのフェーズにおける重要なポイントを紹介します。
Planは、広告運用の質を決める非常に重要なフェーズです。
目標とKPIを明確にする
Web広告の目的は企業によって異なります。
- 問い合わせ数を増やしたい
- 新規顧客の獲得単価を抑えたい
- 顕在層の獲得を強化したい
- 認知拡大を優先したい
目的に応じた目標を、KPIとして具体的な数値で設定することで、見るべき指標が明確になり、改善判断も的を外しにくくなります。

ターゲットと検索意図を深掘りする
ターゲット設定は、キーワード・クリエイティブ・LP構成すべてに影響します。
Web広告の中でも特にリスティング広告は、検索意図とかみ合っているかどうかが成果を左右するため、検索で広告にたどり着くユーザーが今どんな検討段階にあり、何を知りたいのかを深掘りする必要があります。
例:
「転職 志望動機 例文」と検索するユーザー
→ 志望動機の考え方よりも、実際に使える例文や書き方のテンプレートを探している
この検索意図とずれてしまうと、どれだけ配信量があってもコンバージョン率(CVR)は向上しません。
媒体の特徴を踏まえて配信先を決定する
広告媒体はそれぞれ得意分野が異なるため、それぞれの特徴を踏まえたうえで、目的やターゲットに応じて配信しないと迷走しやすくなります。
- リスティング広告:今すぐ情報を探しているユーザー(顕在層)に届ける
- ディスプレイ広告:幅広い層にまず知ってもらう
- SNS広告:興味・関心の近いユーザーへ情報を届ける
- 動画広告:商品の魅力や特徴をわかりやすく伝える
媒体ごとに広告キャンペーンの役割を事前に定義することで、改善施策の優先順位が明確になります。
各媒体の特徴を詳しく知りたい方には、以下の記事がおすすめです!

配信期間・予算・検証量を設計する
改善には十分なデータ量が必要です。
以下のような項目をPlanの段階で設定しておくことが、PDCAの精度向上につながります。
- 媒体の学習期間
- 検証に必要な期間
- 改善に必要なデータ量
より適切な予算設計や期間の考え方については、以下の記事も参考になります。

Do(実行)|仮説を施策に落とすフェーズ
Doは、Planで作った仮説を実際に広告で検証する段階です。
ここでは、計画したことを具体的な操作や設定に落とし込むことが求められ、後のCheckで正しく評価できるよう丁寧に実装することが重要です。
配信構造を改善しやすい形にする
例えば、1つのキャンペーンの中に複数のターゲティングや訴求を混在させてしまうと、改善すべきポイントがわからなくなります。
配信を改善しやすくするためには、ターゲットごとに広告グループを分けて整理し、後から効果を比較できる構造にすることが重要です。
脱毛サロンのリスティング広告の例
- 自社のサロンを探している層向けの広告グループ(指名検索)
- 都内でサロンを探している層向けの広告グループ(地域名で検索)
- 課題解決策を探している層向けの広告グループ(毛深い 原因、等で検索)
このように分類することで、Checkフェーズでどのターゲットが最も効果的かが一目でわかります。
LPと検索意図の整合性を意識する
広告をクリックしたユーザーは、LPを開くと同時に「期待した内容かどうか」を判断します。
ユーザーのニーズを把握し、それをLPに的確に反映することが、広告で成果を上げるためには欠かせません。
特に意識すべきポイントとしては、以下のような項目があります。
- ファーストビューのメッセージが検索意図に沿っているか
(ユーザーが知りたいことを最初に示せているか) - CTAの位置や導線がわかりやすいか
(「申し込み」「問い合わせ」など、次の行動がすぐ理解できるか) - サービス比較・口コミなど、ユーザーが購入や契約を判断するための材料が適切に配置されているか
ペルソナやカスタマージャーニーをもとに、ユーザーを自然にCVに導くコンテンツ設計を練り上げましょう。
Check(評価)|成果につながる原因を特定する
Checkフェーズは、Planで設定したKPIを基準にして指標を追いかけます。
成果が出ていないときには、どこに課題があるかを深掘りし、仮説立てをして改善につなげていく必要があります。
指標は単体ではなく、組み合わせで見る
広告において見るべき指標はいくつかに分けられますが、それぞれの指標の意味だけでなく、その指標から何を評価・判断するのかを認識しておくことが大切です。
- CTR(クリック率)
- 広告に興味を持ってもらえたかを見る指標
広告の訴求や見出しがユーザーを動かせるものになっているかを判断できる
- 広告に興味を持ってもらえたかを見る指標
- CVR(コンバージョン率)
- LPでどれだけ行動につながったかを見る指標
広告からLPに来たユーザーの期待と内容がかみ合っているかがわかる
- LPでどれだけ行動につながったかを見る指標
- CPA(顧客獲得単価)
- 広告の費用対効果を示す指標
広告費に対して成果が効率的に出ているかを判断できる
- 広告の費用対効果を示す指標
- ROAS(広告費用対効果)
- 収益ベースで広告価値を評価する指標
売上(または利益)から見て投資として有用かを判断できる
- 収益ベースで広告価値を評価する指標
例:
CTRが高いのにCVRが低い → LPが検索意図とズレている可能性
流入数に変化はないがCPAが急騰 → 競合増加の影響の可能性
点ではなく、複数の指標を組み合わせて見ることで、課題がよりくっきり浮かび上がってきます。
また、数値が動いた理由まで考えられるようになると、改善の精度が一気に上がります。
要素を分解して課題の原因を特定する
Checkフェーズでは、Planで設定したKPIをもとに成果を評価し、どの要素が課題の原因になっているかを構造的に特定します。
単に数値の増減を見るだけでは改善方向を誤りやすいため、粒度の大きい切り口から順に細かい要素へと段階的に掘り下げて分析することが重要です。
- 媒体ごとの違い
まず大きな枠組みとして、媒体ごとの違いを確認します。
同じ予算でもGoogleとYahoo!、SNSでは成果構造が大きく異なることが多く、「検索ではCVRが高いがSNSはCPAが高い」など、媒体特性に起因する課題が見えてきます。
- ターゲット分析
次に、ターゲット(オーディエンス)別の分析を行いましょう。
リマーケティング・類似オーディエンス・興味関心など各セグメントを比較することで、「新規層からはクリックされているがCVしない」「既存顧客層はCPAが低い」といった層別の傾向が把握できます。
- クリエイティブ分析
続いて、さらに細かい単位であるクリエイティブ(広告文・バナー)の比較です。
訴求軸や表現の違いによってCTRやCVRが大きく変わるため、「料金訴求はクリックされやすいがCVRが低い」「メリット訴求はCTRが低いがCPAも低い」などの傾向が見えてきます。
クリエイティブは分析改善施策の中でも即効性の高い領域です。
これらの主要な切り口を上から順番に確認したうえで、デバイス・曜日・時間帯などもチェックします。
「スマホのCVRが高い」「平日の午前はCPAが安定する」といったことも判断できるようになれば、より細かく深みのある改善につなげられます。
Action(改善)|優先順位を決めて改善を実行する
Actionは、Checkで特定した課題に対し具体的な改善施策を行うフェーズです。
闇雲に手を動かすのではなく、以下の3ステップで「成果に直結する動き」を徹底しましょう。
1. 仮説に基づいた施策を出す
「CPCが高いのはCTRが低いから(Check)→ 訴求がズレている可能性がある → 広告文を修正する」といったように、必ず「原因・仮説・施策」をセットで考えます。
論理の伴わない施策は、まぐれ当たりはあっても再現性がありません。
2. 4つの観点で優先順位を決める
アイデア全てを実行するのは不可能です。
「インパクト・即効性・コスト・再現性」の4軸で優先度を判断します。
また、新しい施策だけでなく、効果の悪い配信を止める(引き算する)勇気も、全体のパフォーマンス向上には不可欠です。
3. 結果をナレッジとして残す
施策はやりっぱなしにせず、成功・失敗の要因を記録します。
個人の経験で終わらせず、チーム全体で使える「勝ちパターン(資産)」に変えるところまでが、Actionの役割です。
PDCAを止めないための運用リズム(週次・月次)
PDCAが止まる企業の多くは、Check→Actionをいつ、どんなフローで実施するのかが曖昧になっています。
改善を継続するためには、例えば次のように週次・月次で実施内容を決めておくなどすると効果的です。
Checkのルーティン化例
- 週次:短期改善のためのチェック
- 入札単価や予算配分を確認する
- 広告文・クリエイティブの反応をチェックする
- LP内の細かな改善ポイントを洗い出す
- 月次:中長期の方針見直し
- 媒体ごとの予算配分を見直す
- ターゲット設定が目的に合っているかを確認する
- LP全体の訴求軸を再設計する
このサイクルを日々の運用に組み込めば、振り返りが途切れるのを防ぎ、改善の継続性とスピードを安定させられます。
媒体別のPDCA運用ポイント
ひと口にWeb広告のPDCAといっても、広告媒体ごとに改善にあたって特に意識するポイントは異なるため、それぞれの特性を把握しておくことも大切です。
ここでは主要な媒体についてポイントをまとめます。
リスティング広告
検索意図が明確なユーザーが多いため、設定するキーワードの精度をどれだけ高められるかが成果を大きく左右します。
ここでは、キーワードに焦点を当てた改善ポイントを2点紹介します。
まずは、実際のキーワード(検索クエリ)の精査です。
実際に検索され、広告表示や流入が発生した語句を確認し、狙っている意図からズレているものは「除外キーワード」に入れて無駄なコストをカットしましょう。
続いては、入札と広告文の調整です。
獲得率の高いキーワードの入札を強めたり、検索語句を含めた広告文へ修正して品質スコアの向上を図ります。
ディスプレイ広告
ディスプレイ広告は、多くのユーザーに広く接触できますが、配信されるサイトやアプリの質によって成果にばらつきが出やすい媒体です。
表示回数が多いのに成果が出ない場合は、成果につながりにくい場所に表示されている可能性があります。
効果の低い配信面を除外し、どのサイトやアプリで成果が出ているかを定期的に確認することが重要です。こうした配信面の見直しは、CPA改善に直結しやすい取り組みのひとつです。
また、バナークリエイティブのABテストも評価・改善につなげやすい施策です。
常に複数のバナー画像を回し、効果の低いものを入れ替え続けることで、安定した成果の維持につながります。
SNS広告
SNSはタイムラインの流れが速く、ユーザーが広告に「飽きる」スピードも速いため、クリエイティブの鮮度と回転率が命です。
特に同じクリエイティブを使い続けると効果が落ちる傾向が顕著に見られるので、1~2週間単位で新しい画像や動画を投入し続ける体制が必要になります。
また、機械学習が優秀なので、広く配信してアルゴリズムを回すことでターゲティングの精度を高めていくという視点も持っておくと良いでしょう。
まとめ|Web広告運用でPDCAを仕組み化し、成果を継続的に伸ばす
Web広告は、配信すれば簡単に成果が出るものではありません。
着実に成果を伸ばすためには、PDCAを仕組みとして日々の運用フローに組み込むことが大切です。
Planで目的とKPIを定め、Doで仮説を施策に落とし込む。
そしてCheckで結果の理由を読み解き、Actionで改善につなげることで成果が積み上がっていきます。
媒体ごとの特性やユーザーの行動変化も踏まえながら小さな改善を継続する姿勢が、長期的な成長に直結するでしょう。
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この記事を書いた人
田中祐晴
旧Twitterリスティング広告・SNS広告の運用5年目
BtoBのリード獲得をメインとした領域の運用型広告コンサルを担当。
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