こんにちは!ASUE株式会社・広報のN村です。
ASUEも運営に関わっている、名古屋の若手マーケター向けの勉強会「でらマーケ勉強会」。今回は2026年10月16日(金)に開催された第36回に、一参加者として客席から参加してきました!
金曜の夜にもかかわらず、参加者はなんと86名で過去最多。会場はぎゅうぎゅうで、開演前から熱気がすごかったです。
今回ゲストの西井さんは、2年ぶり2度目のご登壇。オープニングでは、前回の西井さんの回で瀬川さんが投稿した実況ポストが、「でらマーケ勉強会史上いちばん伸びたツイート」として紹介されていました。
目次
AI時代の事業会社のマーケティング戦略のつくり方——でらマーケ勉強会 Vol.36
今回のテーマは、「AI時代の事業会社のマーケティング戦略のつくり方」。
ゲストは、株式会社シンクロ 代表取締役/オイシックス・ラ・大地 執行役員CMTの西井敏恭さんと、株式会社GiftX Co-Founderの飯髙悠太さん(𝕏)のお二人です。会場は、毎度お馴染み、株式会社スタメンさまの名古屋オフィス。

西井さんは、化粧品会社で10年弱デジタルマーケティングに携わったあとシンクロを設立し、大手通販やスタートアップなど多くの企業のマーケティングを支援しながら、複数企業の取締役も兼任されている方。2001年から世界一周の旅に出て、ブログもSNSもない時代に、アフリカや南米から自作のホームページを更新し続けていたら人気になって、「インターネットっておもしろい」とこの業界に入ったそうです。帰国後には旅の本も出版されています。
飯髙さんは、でらマーケ登壇は今回で5回目と最多のお方。ベーシックの執行役員としてferretの立ち上げ・グロースに携わり、ホットリンクのCMOを経て、2022年にGiftXを創業。法人ギフトプラットフォーム「GIFTFUL for business」を運営しながら、AI×マーケティング・営業領域でこれまで200社以上を支援されています。『僕らはSNSでモノを買う』などマーケティング専門書の著書も5冊あり、来年3月にはさらに新しい書籍が出る予定とのこと。
飯髙さんからは「東京のイベントでは話せないことを、今日は西井さんがめっちゃ喋ってくれるはず」というフリも。
楽しみですね。
事前の打ち合わせはゼロ。用意されたトークテーマは4つあったものの、話が盛り上がって2つ目あたりで時間が足りなくなる……という、ライブ感たっぷりのトークセッションでした。
広告より口コミが信じられる時代。成果が出る会社は「買ったあと」を見ている
最初のテーマは「成果が出る会社と出ない会社の違い」。
西井さんがまず挙げたのは、「消費者が変わっていることを、ちゃんと理解しているかどうか」でした。テレビCMを見なくなった、という表面的な話ではなく、そもそも企業が発信する情報が多すぎて、ユーザーは広告をほとんど信じていない。じゃあ何を信じているのかというと、口コミ。だからこそ、買ったあとにお客さんがどう思うかを設計するマーケティングが大事になっている、というお話です。
わかりやすい例として出てきたのがiPhone。新しいiPhoneが出ても、15秒のCMで機能を見て買い替える人はほとんどいません。過去のiPhoneを使ってきた体験の積み重ねがあって、そこに新しい要素が乗るから安心して買える。前のモデルの評判が悪ければ、どれだけ宣伝しても売れないわけです。
数字の話も印象的でした。月にかなりの金額を広告へ投資しているある会社で、購入者に「何を見て買おうと思ったか」を聞いたところ、ECでは約5割が「SNSや友達の評判」だったそうです。
それでも、マーケティング=広告宣伝部という組織のまま「露出です、認知です、とりあえずプロモーションします」とやっている会社は、西井さんの感覚で7〜8割。プラットフォームもユーザーも多様化しているのに、分業のまま部分最適で評価してしまっている。SNSでも、バズるかどうかより「思わず人に言いたくなる体験」をプロダクトでつくったほうが、結局は広がる、とのことでした。
飯髙さんも、大手企業の支援で「目標がインプレッション」というズレがよく起きていると話していて、自分の過去の成功体験を正解として握り続けてしまう問題にうなずいていました。
人間は目先のわかりやすい目標に飛びつきがち。
社長が毎週お店でごはんを食べたら、お客さんが増えた
では、お客さんの体験に向き合える会社は何をしているのか。
西井さんが前職の化粧品会社で「すごくよかった」と振り返っていたのが、毎週の商品勉強会です。マーケ部門だけでなく、システムもCSも、全部署が商品を学ぶ時間を持っていた。その仕組みをオイシックスでも取り入れ、商品を実際に使ってもらう取り組みもしたそうです。
さらに強烈だったのが、西井さんの会社で支援している飲食店の話。コロナ禍で3店舗ほど、潰れそうな状態からの支援だったそうですが、そこで一番効いたのが「社長自身が毎週、違う店舗でごはんを食べる」ことでした。
社内では「競合より高いから、安くすれば売れるのでは」という仮説があったものの、実際のお客さんを見てみると、個室で接待に使われているケースが多かった。そんなお客さんにとって、DX化の流れで頑張って導入した注文システムはとくに求められていなかったわけです。そこで提供するメニューを見直したところ、お客さんがぐっと増え、今では10数店舗にまで広がっているとのこと。
飯髙さんからは、あるクライアントのお店のクレームが多かった時期に、店舗で出たクレームが毎日全店舗に共有され、なぜ問題になったのか、どう改善するかまで考える取り組みをしていた事例も紹介されました。
ここから話は「偉い人ほど、お客さんに近くあるべき」という方向へ。会社では経営に近づくほど、お客さんから離れてしまう。西井さんは、ユーザーと話す機会をつくろうとすると「西井さんがやるんですか?」とよく言われるそうですが、実際は経営者こそ一番お客さんをわかっていないといけないと言っていたのが印象的でした。町のお店を回っていた松下幸之助さんの話も出てきて、これからの役職者には、お客さんを理解してサービスをつくる力がより求められていく、というお話でした。
マーケティングは「売れる仕組み」ではなく「買いたい気持ち」づくり
2つ目のテーマは「マーケティングとは何か」。
西井さんが新卒で入った会社の創業者に教わった定義は、「売れる仕組みづくり」でした。たまたま売れるのではなく、売れることを仕組みにする。売る場所を変える、商品に手を加える、価格を変える……すべてが売れる仕組みだ、と。
ところが、その10年後、同じことを聞かれて自信満々に「売れる仕組みづくりです」と答えたら、「ちょっと違うと思う」と言われたそうです。その人の語ったマーケティングの定義は、「買いたい気持ちづくり」。
企業側の人間は、どうしても「売りたい」が先に立ちます。でも、インターネットの時代はお客さんとの距離が近い。だからこそ「お客さんの買いたい気持ちをどうつくるか」という観点で考えると、見えるものがまったく変わる、というお話でした。
飯髙さんも「言っていることの中身は同じなのに、語り方を変えるだけで目線が変わる」と反応していて、トップがどちらの言葉を使うかで、メンバーの思考も「これをどう売るか」から「お客さんが買いたいと思うのはなぜか」に変わっていく、と。マーケティング戦略を考えるときも、「どう売るか」から始めると、スタートの時点でずれてしまうんですね。
エンディングではついつい「売りたい気持ち」が前に出る代表・安江の姿も見られました(笑)
AIは戦術向き。戦略はまだ人間の仕事
ここで話はAIへ。飯髙さんは、時間がかかる定型的な作業はAIにとても向いている一方で、会社の考え方や上位の戦略設計は、まだAIに向いていないと考えているそうです。理由は、経営者が表で話していることと、内側で考えていることはまったく違うことが多く、本当のことはオープンな情報の中にないから。AIと壁打ちするのはいいけれど、何を選ぶかを決めるのは人間だ、というお話でした。
西井さんも、AIがやっているのは戦略というより戦術に近い、と同意。西井さんの考える戦略は、「今までのルールを変えること」です。
たとえば人材。マーケティングをやるうえで、どれだけいい人材を集められるかはとても大事です。でも、評価は年1回、給料が上がるのも年1回、という従来の制度のままでいいのか。成果を出したら翌日に給料が増える、AIで面倒な作業をなくす……そんなふうに会社の制度を変えることも、結果としてマーケティングになるのでは、と。
通信会社の仕事では、使っていないユーザーからはお金をもらわず、使った分だけ払う料金にしたほうが、評判がよくなって新規獲得も増えるのでは、という話も。「今の料金プランをどう伝えるか」はAIでもできるけれど、サービスそのものを変えるところまで踏み込まないと戦略にならない、とのことでした。
数字のない世界で問われる「売れる前に見つける目」
AI時代に人間に残るものは何か。西井さんが話してくれたのは、ある女性アーティストの相談を受けたときのエピソードです。
アニメの主題歌を歌っていて、アメリカでのライブが想像以上に大盛況。ビジネスを手伝ってほしいと相談され、アメリカのプロデューサーや日本のマネージャーと打ち合わせをしたものの、会場費やチケットの数字がまったく出てこない。普段はアイデア側の人間だと思っていた西井さんが、「数字がないと自分は何も判断できない」と気づかされたそうです。
でも考えてみれば、音楽業界のプロにとっては、売れるかどうかはエクセルではわからない世界。観客のノリや熱量を見て「すごいね」と判断する。だからこそ、売れる前に見つける目こそがビジネスで大事で、10人に1人当たれば大成功という仕組みがあれば、あとのマネジメントはAIでもできるようになっていく。そういう目を磨ける人が、これからの時代に強いのでは、というお話でした。
「選択肢を持つ」と「本を買いまくれ」。AI時代のキャリアの話
最後のテーマはキャリア。「今の知識のまま20代に戻れるなら、どう過ごす?」という問いから始まりました。
西井さんは10年前から兼業をしていて、会社も10年前からリモートワーク。どちらも流行っているからではなく、理由があってやっているそうです。「100%うちにコミットしてほしい」と言われても、ほかのこともやっているほうが、その会社に提供できる価値が大きい。アメリカの友人が10か国にメンバーを置いて会社を立ち上げた話や、エストニアの企業を訪問した話から伝わってきたのは、選択肢を持つことの大切さでした。
「日本ではこう」「うちの会社はこう」を否定するのではなく、それ以外も知っていると、会社に持ち込める解決策の幅が広がる。だから、社内で2週間話しても決まらないことが、西井さんが入ると20分で決まると言われるそうです。社員にも「ノットステイホーム」と伝えていて、会社にも家にもいないで外に出よう、と。たとえば初めての場所でミーティング場所を探す、その検索や移動の体験そのものが、お客さんの気持ちを知ることにつながるから、とのことでした。
飯髙さんは、25歳のころにある経営者から言われた「書籍を買いまくれ」という言葉を、今もずっと守っているそうです。30代半ばまでは貯金しなくていいから、自分に投資しろ、と。言われてもやらない人が多いからこそ、ここは20代に戻っても絶対に外さない、と話していました。
わたしは自分の文化的経験に多額の投資をしています(言い訳)。
これを受けて西井さんは、「AI時代は日本語がうまい人が仕事ができるようになる」とも。AIはテキストで動くので、正しく指示を伝えられること、出てきたアウトプットを正しく読み取れることが重要です。同じ本を読んでも理解力は人によってまったく違うし、同じ話をしてもチームの中で伝わる人と伝わらない人がいる——そう考えると、やっぱり読書は重要ですね。
もうひとつ、ドキッとしたのが「学ぶ機会がつくりにくくなっている」という話。西井さんの会社では、新卒の方が2年ほど、ミーティングに同席して資料や議事録をつくっていたそうです。でも今は、AIに指示したほうが早くて正確なので、その仕事がなくなってしまった。当の本人も「AIが出てくる前でよかった」と話しているそうで、上司は意識して学ぶ機会をつくらないといけない、とのこと。
ちなみに西井さんは、AIが出したアウトプットをそのまま持ってこられても、その瞬間に見ないそうです。AIは誰でも使えるからこそ、AIを使っていいアウトプットを出すためのトレーニングが必要、というお話でした。
新人が学ぶために使っていた簡単な業務がなくなって、なんとなくより即戦力になっていくことが求められている感じがあって、大人としてはなんだかな〜と思う。
まとめ:でらマーケ勉強会、次回もぜひご参加ください!
AIの話から始まるかと思いきや、全体を通して何度も出てきたのは「お客さんを見る」ことの大切さでした。デジタルで数字が見えやすくなったからこそ、見えない数字を嗅ぎつける力を持っておかないと負けてしまう——二十数年マーケティングの真ん中にいるお二人の言葉だからこその重みがありました。
質疑応答でも、「習慣化していない行動をあえてとる」「自分の1週間をAIを使わずに振り返る」など、明日からまねできそうなお話がたくさん飛び出していました(この辺は参加者さまの特権ということで!)。もっと濃いお話が聞きたい!という方は、ぜひぜひご興味のある回に遊びに来てみてください!
今回も懇親会では、コーノコーラさまのご協賛で、クラフトコーラをいただきました!ごちそうさまでした!
次回は2026年12月18日(金)、年内ラストの開催です!ゲストは株式会社ベイジの枌谷力さん(𝕏)です。
最新の開催情報は、でらマーケ勉強会公式X(@dmNagoya)でお知らせしていますので、ぜひフォローをお願いします!
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この記事を書いた人
2016年入社。ASUE株式会社広報を担当。メールマガジン「ほぼ週刊ASUE通信」もお送りしています。ほぼ週刊なので週刊ではない。月初に公開するWebマーケティング情報をまとめたツキイチシリーズはちゃんと月刊です。
趣味はミュージカル観劇。おすすめ作品を知りたい方はN村のTwitterまでお問い合わせください。パーソナルカラーはイエベ春。
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